• 垣根涼介『室町無頼』

この剥き出しの時代に、自分の武器を持て。

応仁の乱前夜、富める者の勝手し放題でかつてなく飢える者に溢れ返った京の都。ならず者の頭目ながら骨皮道賢(ほねかわどうけん)は権力側に食い込んで市中警護役を任され、浮浪の徒・蓮田兵衛(はすだひょうえ)は、ひとり生き残った用心棒を兵法者に仕立てようとし、近江の古老に預けた。兵衛は飢民を糾合し、日本史に悪名を刻む企てを画策していた……。史実に基づく歴史巨篇。

2016.8.22 新潮社 単行本 税込1,836円

垣根涼介『室町無頼』
垣根涼介『室町無頼』

この剥き出しの時代に、自分の武器を持て。

この剥き出しの時代に、自分の武器を持て。

 皆さまこんにちは。どうもご無沙汰しておりました。
 さて、『室町無頼』が8月18日、新潮社より発売になります。
 応仁の乱前夜の、京の都が舞台です。当時、無政府状態になっていた室町幕府のこの首都には、かつてなく富める者が存在する一方で、凄まじい数の牢人や餓民が溢れ返っていました。
 そんな混沌の時代の中から、忽然と世の辻に出てきた二人の牢人がいます。この二人の名は、今でも日本史上に稀代の悪人(?)として刻まれています。

 一人は、ならず者三百人を率いる傭兵軍の頭目・骨皮道賢(ほねかわどうけん)。
 骨皮道賢は幕府内部に食い込み、市中の治安警護役を任じられながらも、その裏では当時の権力構造を覆す機会を虎視眈々と狙っていました。

 そしてもう一人は、市中の浮浪たちの首魁であった蓮田兵衛(はすだひょうえ)。
 困窮を極める地下人たちを助け、畿内の百姓たちを糾合し、まったく新しい土一揆を企てることで、幕府の体制をその根幹から揺るがせようとします。

 この二人が肝胆相照らして行動を起こし、それまでの幕府の権威・信用を大きく揺るがせ、それが結果として、応仁の乱を経て戦国時代へと至る機運を作っていった、という史実に基づく話です。原稿用紙換算で950枚ほどの長編となりました。
 小説のテイストとしては、歴史小説ながらも「ワイルド・ソウル」や「ヒートアイランド」にかなり近いもので、それら拙著が好きだった方には、かなり喜んでいただける作品になったのではないかと思っております。何故ならば、この室町中期にあった社会の様相と矛盾は、今の停滞する日本社会にもかなり通底するものがあると考えているからです。
 昨年の七月に週刊新潮での連載は終わっていたのですが、その後の大幅な改稿や、私の実家のトラブル処理などに時間を取られ(汗)、結果として一年後の発売になりました。

 お。あとひとつ、言い忘れていた出来事があります。
 改稿の最終段階で、ふと、
「道賢がそれまでの生き方を捨てて無頼の世界に身を投じ、頭を剃り毀った時の覚悟と心境は、どんなものだったのだろう」
と、思いを馳せました。
 実は私も、去年から今年にかけてのこの一年は、長年に渡る実家のゴタゴタや、親がこれまでに世間に対してかけてきた迷惑をこれ以上長引かせないためにも、親の今後の在り方に対して、かなりきつい決断を迫られた時期でもありました。人生で最もきつい決断の一つでした。
 そういう窮地に陥っていた心境も重なり、私も心機一転、気持ちの上でもこれから新しく仕切り直すために、バリカンを買ってきて丸坊主にしてみました。
 そんな経緯もあり、(私が忖度した)その時の道賢の心境が、「こんな気持ちになるのか…」という実感と共に迫ってきて、納得できる形で改稿に活きてきました。

 皆さま、今週の中ごろにはぜひ本屋で手に取ってみてください。
 どうぞよろしくお願い致します。

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