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サウダージ
この世界はくだらなく、無理解で、下衆で、無慈悲で、そして愛に満ちている。
私の作品の中では、初めて男女の関係性を前面に押し出したものとなりました。この連載原稿を書いていたときの、筆の乗ること乗ること。妖気が乗り移るとは、まさにこのことでしょう。
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「別冊文藝春秋」に、一年にわたり連載してきた長編小説。最終回は2004年の五月号。
私の作品の中では、初めて男女の関係性を前面に押し出したものとなりました。ただし、『書くに至る理由』でも述べたように、単なる恋愛モノを書いたつもりはございませんので、あしからず。
主人公は、在日の日系ブラジル二世、高木耕一。一人働き専門の泥棒である。
耕一の彼女は、コロンビアからの出稼ぎ売春婦であるDD(本名はシモーネ・アウグスト)。
そしてこの二人とは対照的なもう一人の主人公に、『ヒートアイランド』から『ギャングスター・レッスン』を通して、ようやく一人前の裏金専門の泥棒になったアキ。そのアキを指導する桃井・柿沢の両名。そしてアキの年上の彼女、佐々木和子。
詳しいストーリイは読む趣向を削ぐことになるので話しませんが、いやー、この連載原稿を書いていたときの、筆の乗ること乗ること。
とにかく圧倒的なスピードで前へ前へと書き進んでゆき、自分でも驚きました。妖気が乗り移るとは、まさにこのことでしょう。
自分で言うのも変ですが、この小説世界のグルーヴ感と官能、そして登場人物たちの織り成す滑稽シーンを楽しんでいただければ幸いです。
ちなみに耕一の彼女・DDは、現時点での私の書いた女性の中では、ベストキャラ(と、一人で自負しております)。
こういう女って、実際に付き合ってみると本当に扱いづらくて、ロクでもないことばかり口走るし、アタマにくることも多々あるし、どうせケンカばかりの毎日になるのですが、それでもやっぱり引き摺られてしまう・・・・・・うーん。
ま、自分の快適性を求めて女と付き合うわけではありませんからね。そんなクズみたいな男も、世の中には多いですが。
でも、「タイプの男性像は?」などと聞かれて、「優しい人」なんて平気な顔して答える女も、似たようなものです。
のっけから相手に期待する「優しさ」など、手前都合の快適さを求めている以外の、なにものでもないでしょう。やや厳しい見方かもしれませんが。