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月は怒らない

誰のせいでもない。誰のためでもない

今という時間にどう落とし前を付けていくか。
過去への照射はそれで変わっていく。
記憶の中の原風景は変質していく。
過去は、現在の立ち位置の言い訳にはならない。

化粧もしない。服も地味。美人でもない戸籍係の女にどうしようもなく魅かれていく3人の男。その理由は? 男たちの視点を通して、女の正体が徐々に焙り出される。人間の繋がりの意味を問う挑戦作。

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  • 月は怒らない

    文庫本

    集英社

    702円(税込)

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  • 月は怒らない

    単行本

    集英社

    1,680円(税込)

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小説すばるで連載していた長編小説の単行本化。系列としては『サウダージ』や『クレイジーヘヴン』の世界観に共通する系譜として読んでもらえればと思います。

ただ、その当時からすれば(サウダージは2002年に執筆。クレイジーヘヴンは2003年に執筆)、すでにこの小説を書いていた時点で十年近くの時間が経っていますから、私の年齢とともに、主人公達もその言動がずいぶんとおとなしくなりましたね(苦笑)。その大人しくなった分だけ、彼ら主人公は自分の過去や現在の置かれた状況をあれこれと考えるようになってきました。

余談ですが、四年ほど前に私がかなりひどい精神状態になってずっと病床に臥せっていたとき、高校時代の友人がふらりと長崎からやってきました。
彼は寝室に臥せっている私を見るなりゲラゲラと笑い出し、「あ〜あ、おまえ、こげなざまになって、さぞ辛かとやろうなあ」と言ってのけました。

しばらくして彼がのたまうには、「人間、法律を犯さん限り、ナニナニしなくてはならない、ナニナニすべき、なんてもんは、何一つなかと」
その上で、現状でそんなに苦しいんなら、そんなもんみんな捨てちまえ、と言いました。「全部捨てて、おまえの大好きなブラジルや南の島にでも行け。そこで当分暮らせ。マジに人間、生きとってナンボぞ」

……結局私はこうして今も小説を書いているわけですから、彼の言葉には従わなかったのですが、今もそれらの台詞ははっきりと覚えています。
「人間、今どうにもならんことでも、時間さえ経てば、すべてはおさまるところにおさまっていく。良ければ良いなりに、悪ければ悪いなりにおさまっていく。時間だけが、すべての人間に平等たい」

……まあ、何故かそんなことを思い出しました。すいません、この文章の後半は本の解説にはぜんぜんなっていませんね(笑)。ご容赦を。

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