information

Vol.065
『真夏の島に咲く花は』の二次文庫(中央公論新社)が、6月22日(木)に発売となります。

2017年6月22日

今日の首都圏は昨日の大雨とはうって変わって快晴ですなー。

さて、『真夏の島に咲く花は』の二次文庫(中央公論新社)が、本日22日(木)に全国発売となります。

世界中、どうにもグローバリズムの疲弊が出ているようで、民族問題や経済格差の問題を煽る政治家がけっこう台頭してきていますなー。反知性主義(本来は決して悪い意味ではない)を自分の都合のいいように利用する人間は、見ていてけっこう嫌なもんです。

民族問題、教育や経済格差、為替差益など諸々な要素が複雑に絡み合った問題を、大鉈を振るうように「こうすれば万事、オーケイです。悪いのはあいつらだ!」みないなシンプルな言い方をする。

そんなことあるわけないだろって、その指導者の脳味噌に思わず突っ込みを入れたくなる今日この頃です。複雑な要素が入れ乱れた問題をシンプルに解決することなど、そもそもできない。

まあ、この本の舞台となったフィジーも国家が成立した頃から、この民族的な対立の問題は内包していたのですが。

ちなみにこの本には、七年前の一次文庫にはなかった解説が付属します。大澤真幸さんという社会学者の方に、とても良い解説を書いてもらいました。

その解説の中に、こんなくだりがあります。一部抜粋して、以下に書きます。

「他者を受け入れるということ、多様な他者を受け入れること、それは何を意味しているのか。他者への尊重、他者への寛容、他者の承認。それが良いことであるのは明らかだ。そんなことは誰もが主張する。抽象的である限りでの他者を受け入れることはたやすい。しかし、他者は常に具体的である。具体的な他者に直面したとき、抽象的なだけの「他者への尊重」の思想はまったく無力である。

他者を受け入れるためのわれわれの決定は、いわば、二つの段階を経る。まず、他者は迫ってくる。受け入れてほしい、と。私に決定をせきたてる。ついで、私は、この他者からの要請に応答しなくてはならない。その応答は、常に、具体的で現実的な状況の中でくだされる。その二つの段階をどのように接続するのかが、「他者の受け入れ」という問題のポイントである」

うーん。この小説の主題を見事に言い表して頂き、感謝です。

まだ未読の方は、この解説も含めて、楽しく小説を読んでもらえればと思います。
ではではー。

垣根涼介

※こちらの内容は、メルマガ「垣根涼介 Dawning Mail」にて配信しております。配信をご希望の方はこちらよりお申し込みください。

トップへ