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Vol.066
『信長の原理』、8月31日(金)に発売です。
信長の生涯と「本能寺の変」の真相の、私なりの結論です。
2018年8月29日
どうもみなさま、大変ご無沙汰しておりました。
さて、角川書店より、8月31日に『信長の原理』(1,800円 税別)が発売になります。
二年前の八月に連載を始め、当初は一年ほどの予定で原稿用紙600〜700枚前後の作品を想定していました。ですが、信長という題材は予想以上に手強く(汗)、終わってみれば二年近くの連載になり、原稿用紙1,150枚前後と、ほぼ倍のボリュームになってしまいました。以前に書いた『ワイルド・ソウル』と同じくらいの分量です。おかげで、去年は新作を出せずじまいでした(苦笑)。
そして、危うく上下巻の二冊になるところを、出来るだけ安価にしたいと思い、物語を刈り込んで1,000枚前後まで圧縮し、ようやく一冊にまとめ上げることが出来ました。それでも単行本で600ページ弱になり、今までで最も分厚い単行本となりました。
で、ここからが本題です。
私は、信長という人物は巷で言われるような天才では決してなく、物事の原理と組織構造の効率を愚直に、そして執拗に追及していった結果が、あの苛烈な生き方と、悲劇的な最後に繋がったのだろうと感じます。もし彼が本物の天才なら、部下に殺されることなどもなかったでしょうしね(笑)。
ちなみに著名な投資家、ジョージ・ソロスの言葉に以下のものがあります。
「私たちがいま住む世界についての理解は、もともと不完全であり、完全な社会などは到達不可能なのだ。ならば、私たちは次善のもので良しとせねばならない。それは、不完全な社会ではあるが、それでも限りなく改善していくことはできる社会である」
私は、職業的投資家と呼ばれる人たちはあまり好きではありませんが、その好悪を措いても、この言葉は、ある種の真実を突いていると思います。かつてのソ連の崩壊なども、ここに端を発している面もあるのではないかと感じられます。
繰り返しますが、信長が懸命に突き詰めていったこの世の原理と組織構造が、結果として織田家を急拡大させ、しかし、その構造上の瑕疵(かし)が、家臣たちの苦悩と焦燥を生み、結果として本能寺の変を呼び込んでしまったのではないか……。
で、このテーマを信長とその家臣たちという舞台設定のみに絞り、ひたすらに最短距離で書いてきましたが、実際に書いてみると(当然の帰結ではありますが)、信長ほど部下や同盟者に事ある度に裏切られた部将も稀だろうと、ひどく実感させられました。その側面では、気の毒な人間でもあります。
ですがまあ、皆さんにはこのような理屈は抜きにして、純粋にエンターテイメントとして、楽しく読んでもらえればと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
垣根涼介
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